本記事のデータは、2026年4月21日時点でDNSJPが保有するDB内の.jpドメインのうち、属性型 (co.jp/ne.jp/or.jp/go.jp/ac.jp/ed.jp/lg.jp/gr.jp/ad.jp) と汎用.jp の10カテゴリに分類し、各カテゴリのDNS解決状況・IPv6対応・MXレコード有無を集計したものです。.jpドメインの完全な全数調査ではなく、DNSJPの収集範囲内での計測値です。

286,127
.jp属性型 + 汎用.jpの登録総数 (DNSJP収集分)
解決済み 206,243ドメイン / 最大ad.jp 97.7% / 最小汎用.jp 69.8%

.jpドメインは登録要件によって10個の属性型に分かれている。co.jpは法人、or.jpは非営利、ac.jpは大学、ed.jpは学校、go.jpは政府、lg.jpは地方自治体、ad.jpはJPNIC会員、ne.jpはネットワークサービス、gr.jpは任意団体、そして誰でも取れる汎用.jp。

この分け方自体はJPRSの登録ルールだが、今回はそれを逆手に取った。属性型ごとに運用品質は違うのか。結論から言うと、違った。それも、予想より露骨に。ad.jp 97.7%、ed.jp 18.2%、go.jp 12.9% — この3つの数字が、属性型.jpの性格を端的に表している。

10属性を1枚の表で

まず全体を並べる。ドメイン数の多い順。

属性型 登録種別 登録数 解決数 解決率 MX率 IPv6率
汎用.jp 誰でも 158,106 110,407 69.8% 46.7% 7.6%
co.jp 登記法人 79,499 56,231 70.7% 57.4% 5.8%
or.jp 非営利 14,429 11,525 79.9% 61.2% 3.4%
ne.jp ネットワーク 10,722 8,696 81.1% 29.3% 4.8%
ac.jp 大学・高専 10,502 8,738 83.2% 26.1% 3.4%
go.jp 政府機関 3,584 2,834 79.1% 12.9% 7.1%
lg.jp 地方自治体 2,871 2,301 80.1% 15.3% 2.8%
ed.jp 学校 (小中高) 2,752 2,317 84.2% 43.0% 18.2%
gr.jp 任意団体 2,624 2,180 83.1% 50.1% 5.9%
ad.jp JPNIC会員 1,038 1,014 97.7% 14.3% 10.9%

解決率だけ見ても、汎用.jp 69.8%からad.jp 97.7%まで28ポイント開いている。これは「ドメインが生きているか (DNSが応答するか)」という最も基本的な指標。属性型ごとに、廃止率がこれだけ違う。

3つの外れ値が物語る属性型の性格

全部の数字を横並びで眺めても読めない。だから外れ値だけを抜き出す。この調査で際立ったのは3つ。

ad.jp — 解決率97.7% — 属性型で唯一の「ほぼ全部生きている」

ad.jpはJPNIC会員組織のみが登録できる。審査が厳しく、組織が活動していなければ更新されない。結果として登録1,038件のうち1,014件が現役。残り24件が無応答なだけ。他属性型の解決率が70-84%に収まるなか、ad.jpだけが100%に近い。登録要件の厳しさは、運用品質とほぼ直接相関するという仮説の、強い傍証になる。

ed.jp — IPv6対応率18.2% — 属性型で突出

ed.jpは小中高校向けの属性型。解決済み2,317校のうち421校がAAAAレコードを持つ。co.jp 5.8%・汎用.jp 7.6%と比べると2-3倍。GIGAスクール構想 (2020年) で学校のネットワークをほぼゼロから構築した結果、IPv6対応が最初から組み込まれた可能性が高い。レガシーが少ない環境は、v6対応も早い。商用セクターは旧インフラの呪縛から抜けられていない。

go.jp / lg.jp — MX設定率12.9% / 15.3% — メールを持たない政府系ドメイン

go.jp (政府機関) とlg.jp (地方自治体) は解決済みドメインの10数%しかMXを持たない。他の属性型が30-60%台に集中するなかで、大きく低い。政府系は、Webサイト用ドメインとメール用ドメインを分離運用している。例えば「meti.go.jp」本体ドメインにメールは来ない。サブドメインや別ドメインに集約する設計。MXの不在は「メールがない」のではなく「別ドメインにある」と読む必要がある。

登録要件が運用品質を決めている

ここから先は、上の表を別の角度から読んだ話。

厳しい登録 = 高い解決率

解決率の高い順に並べると、ad.jp 97.7% → ed.jp 84.2% → ac.jp 83.2% → gr.jp 83.1% → ne.jp 81.1% → lg.jp 80.1% → or.jp 79.9% → go.jp 79.1% → co.jp 70.7% → 汎用.jp 69.8%。

きれいに並んでいる。ad.jpとed.jp/ac.jp/go.jp/lg.jpは登録要件が厳しく、組織が存続している限りドメインも維持される。gr.jp/ne.jp/or.jpは任意団体・ネットワーク・非営利で、多少の審査がある。co.jpは法人登記を求めるが、法人番号があれば取れる。汎用.jpは誰でも取れる。

一方で、解決率70%台の属性型は「廃業・倒産・組織解散」「キャンペーン終了」「更新忘れ」が約30%という計算になる。これらは「ゾンビドメイン」としてDNSゾーンには登録されているが実体がない。ランキングの最下位にある汎用.jpとco.jpの解決しない約47,000件は、フィッシングや悪用の温床になりやすい。期限切れを買い戻して詐欺に使う手口はよく観測される。

co.jpとor.jpはメール依存度が高い

MX設定率で見ると、or.jp 61.2% > co.jp 57.4% > gr.jp 50.1% > 汎用.jp 46.7% > ed.jp 43.0% > ne.jp 29.3% > ac.jp 26.1%。or.jpが1位なのは意外だが、NPO・財団法人・社団法人は会員連絡や寄付者対応でメールが主戦場。co.jpも当然メール依存度が高い。

興味深いのはac.jp (大学) が26.1%と低いこと。大学は学部・部署ごとにサブドメインを切って、そこにMXを置く運用が多い (例: dept.u-tokyo.ac.jp)。ルートドメインにはMXがなくてもいい構造になっている。これは政府系と似た設計思想。MX率の低さは、組織の階層化の副産物として読める。

IPv6は商用セクターが最後

IPv6対応率を高い順にすると、ed.jp 18.2% → ad.jp 10.9% → 汎用.jp 7.6% → go.jp 7.1% → gr.jp 5.9% → co.jp 5.8% → ne.jp 4.8% → ac.jp 3.4% → or.jp 3.4% → lg.jp 2.8%。

ed.jp (GIGAスクール) とad.jp (JPNIC会員=インフラ運営者が多い) が10%超で頭一つ抜ける。次が汎用.jp 7.6%。ここは個人・新興スタートアップが多く、CDN (Cloudflare等) 経由でIPv6が自動的に有効化されているケースを含む。

逆に下位にいるのはlg.jp (地方自治体)、or.jp (NPO)、ac.jp (大学)。予算と更新頻度の問題だ。大学は巨大な既存インフラを持っているため変更コストが大きく、自治体・NPOは予算がない。新しくインフラを作った属性型だけがIPv6に追いついている。これは.jpに限らず、どの国でも観測できる傾向だが、.jpのほうが差が大きく出ている。

自分のドメインが属性型ごとの平均からどれくらい外れているかを見る

もしあなたのドメインが example.co.jp で、IPv6が有効でなければ、co.jp平均の5.8%には入っていない側にいる。MXがなければ、co.jp平均57.4%から下方に外れる。自社ドメインの立ち位置を属性型平均と比較するだけで、見えてくるものがある。

DNSJPのドメイン検索でAAAAレコード・MXレコード・DNSSECの有無は確認できる。CDN導入だけでIPv6は有効化されるので、対応していないのであれば次回のインフラ更新タイミングで合わせて入れておくと、あと5年は後悔しない。

よくある質問

.jp属性型ドメインの解決率はどれくらい違いますか?
ad.jpが97.7% (1,014/1,038) で最高、最低は汎用.jp 69.8%。登録要件が厳しいほど解決率が高く出ます。
ed.jpのIPv6対応率が高いのはなぜですか?
解決済みed.jpのうち18.2%がAAAAレコードを持ちます。GIGAスクール構想で新設されたネットワークにIPv6が最初から組み込まれた可能性が高い。レガシー環境の少なさが効いています。
go.jpとlg.jpのMX設定率が極端に低いのはなぜですか?
go.jp 12.9%、lg.jp 15.3%。政府・自治体はWebドメインとメールドメインを分離運用する習慣があり、ルートドメインにMXを置かない設計が支配的です。メールがないのではなく、別ドメインにあります。
or.jpはどんな組織が使っていますか?
NPO、財団法人、社団法人、生協などの非営利団体。MX設定率は61.2%で属性型中最高、会員通信でのメール依存度が高い業態です。一方でIPv6対応率は3.4%と低く、予算制約が見えます。
co.jpと汎用.jpは何が違いますか?
co.jpは登記法人限定・1社1ドメイン制限、汎用.jpは誰でも取れます。解決率はほぼ同水準 (70%前後) ですが、MX率はco.jp 57.4% vs 汎用.jp 46.7%で差が出ます。汎用.jpには単発キャンペーン用途が多く含まれるため。

データ収集・集計方法

  • 対象ドメイン: 2026年4月21日時点でDNSJPのDBに登録されている.jpドメイン全数から、属性型9種 (co.jp/ne.jp/or.jp/go.jp/ac.jp/ed.jp/lg.jp/gr.jp/ad.jp) および汎用.jp (ドットが1つで属性ラベルなし) を抽出。
  • 属性型の判定: 正規表現 (\.co\.jp$ 等) でドメイン末尾をマッチ。9属性に該当しない.jpドメインを汎用.jpに分類。
  • 解決率: domains.dns_resolved = true (過去にDNS応答があった) の割合。
  • MX率: 解決済みドメインのうち dns_records テーブルにMXレコードが存在する割合。
  • IPv6率: 解決済みドメインのうち dns_records テーブルにAAAAレコードが存在する割合。
  • DNSJPの収集源: 複数の公的・商用データソースから独自に収集したドメインリストを基礎としている。.jpドメインの完全な全数調査ではない。