表題のとおり、当社で解決済みの.jpドメイン約102万件のNSレコードを集計し、どのホスティング/DNS事業者がどれくらいの.jpドメインを背負っているかを並べた。海外プレイヤー (AWS / Cloudflare) も上位に食い込んでくる構図を、数字で確認したい。
上位 10 社で .jp の3割をカバー
| 順位 | NS提供者 | 支配ドメイン数 | シェア |
|---|---|---|---|
| 1 | エックスサーバー (xserver.jp) | 114,826 | 11.2% |
| 2 | さくらインターネット (dns.ne.jp) | 109,450 | 10.7% |
| 3 | AWS Route 53 (awsdns) | 82,425 | 8.1% |
| 4 | お名前.com (dnsv.jp) | 58,580 | 5.7% |
| 5 | GMOサーバー (gmoserver.jp) | 54,472 | 5.3% |
| 6 | ムームードメイン (muumuu-domain.com) | 49,368 | 4.8% |
| 7 | ロリポップ・ヘテムル (GMO系) | 45,432 | 4.4% |
| 8 | customer.ne.jp | 23,239 | 2.3% |
| 9 | VALUE-DOMAIN (value-domain.com) | 22,876 | 2.2% |
| 10 | Cloudflare (cloudflare.com) | 15,774 | 1.5% |
合計 576,442 ドメイン、全体の 56.4% をこの 10 社が占めている。残りの 44% は中堅ホスティング、自社運用、IaaS 上のセルフ運用など長尾。集計対象は dns_resolved=TRUE になっている.jp 1,022,954 件。シェアは「ある.jpドメインの NS レコードがどの提供者を指しているか」を 1 ドメイン 1 票で集計したもの。1 ドメインが冗長性のため複数提供者に NS を分散しているケース (例: AWS + Cloudflare 併用) は両方にカウントしている。
国内専業ホスティングがやはり強い
1〜2 位はエックスサーバーとさくらインターネット。両社とも個人ブログ/中小企業サイト向けの共有レンタルサーバが主力で、ここの NS が DNS そのものを兼ねている形。GMO 系列 (お名前.com / GMO サーバー / ムームードメイン / ロリポップ / VALUE-DOMAIN) を合算すると 23.0万ドメイン (22.4%) で、単一提供者なら 1 位。GMO の事業ポートフォリオの広さがそのまま .jp DNS のインフラ地盤になっている。
当社で日経 225 企業を観測しているトラッカー (/nikkei225-dmarc) の傾向と一致する観察として、上場企業の多くは AWS Route 53 か Cloudflare を選ぶ一方、中小・個人事業者はレンタルサーバ付属の DNS を使う。その層の絶対量が大きいので、国内ホスティング業者が上位を独占する格好になる。
AWS が 3 位、Cloudflare は 10 位 — 海外勢の浸透度
AWS Route 53 が 8.2 万ドメインで 3 位というのは正直少し意外だった。北米企業による.jp 取得が増えていることに加え、日系企業でも AWS フル活用の組織は Route 53 を素直に使う流れがあるのだろう。Cloudflare は 1.6 万ドメイン (1.5%) で 10 位、海外 SEO/グローバル発信を意識しているサイトに偏っている可能性が高い。Google Cloud DNS は上位 20 に入らなかった (集計時に明示的にラベル化していないため、未分類の長尾に紛れている可能性はある)。
北米プレイヤー全体で 9.8 万ドメイン (9.6%)。一方の国内専業ホスティング上位 7 社合計は 45.5 万ドメイン (44.4%)。サイズだけ見ると国内勢圧勝だが、上位企業の規模・トラフィック量で重みづけすると見方が変わる可能性がある (本稿は「.jp ドメイン数」で揃えており、トラフィック重みづけはしていない)。
意外と多いのが「customer.ne.jp」
8 位の customer.ne.jp は 2.3 万ドメイン。これは某 ISP の業務用 DNS ホスティングで、ホスティング契約に付いてくる「設定代行サブドメイン」が多数の .jp の NS として登録されている状態。ホスティング主体のユーザは自分のドメインの NS をそのまま提供者の名前空間に置いていることが多く、可搬性 (移行のしやすさ) は犠牲にしている。
同じ構図は alpha-lt.net (アルファメール) や technowave.ne.jp、sphere.ad.jp などにも見える。いずれも 9000-10000 ドメイン規模で、地域系/業界系 ISP が母体。「自分のドメインの DNS を誰が見ているか」を顧客の側で把握していないケースは想像以上に多い。
運用者として知っておく価値があるのは何か
この集計から個人的に持ち帰ったのは 3 つ。
一つ目、NS 提供者の選択は「ホスティング契約のオマケ」になりがちな現実。1.7 億 (.jp 全体は 1 億超だが本ページは DNSJP で観測できた 102 万件) のうち、上記 8 社で半分以上を占めるということは、契約者の多くは独立した DNS 戦略 (geo-DNS, anycast, DDoS 耐性など) を持たないということ。事業継続性 (BCP) の観点で見ると、ホスティング業者と DNS 提供者を分離していない構造は、片方が落ちると両方落ちる。
二つ目、AWS Route 53 は「日本企業が AWS フル活用するときの選択肢」として既に上位。一方で Cloudflare は意外と少ない。当社が DNS/SSL/CDN 最適化サービスで受ける相談の中では Cloudflare 移行案件は増えているが、移行前のベースラインとして Cloudflare はまだ 1.5% に過ぎない。これからシェアが増える可能性のある領域。
三つ目、「自社で見ているのは誰か」を知らない事業者がいること。customer.ne.jp / alpha-lt.net 系列の 4-5 万ドメインは、契約上はレンタルサーバの一部だが、運用上は移行が困難になりがち。DNS の所在を自分で言えないなら、それは可搬性が無いと宣言しているのと同じ意味になる。
確認方法: 自社ドメインの NS 提供者を確認したい場合は、本サイトのDNS検索またはWHOISで example.co.jp を引くと NS レコードが見える。NS が「ホスティング業者の社名サブドメイン (ns1.shared-hosting.example.co.jp 等)」になっている場合、ホスティング契約と DNS が一体化している。
集計データソース: 当社で独自に解決した.jpドメイン 1,022,954 件の NS レコードを 2026 年 5 月 9 日時点で集計。集計クエリは [domain JOIN dns_records WHERE rrtype='NS'] による単純カウント。「shareは1ドメイン1票」式で、複数 NS を持つドメインは各提供者に重複カウント。記事中に挙げた数字は集計時点の値で、定期再スキャンで動く可能性がある。著者: Inoue (DNSJP, 個人事業)。連絡: /contact.html。